抜け出せメランコリー

うつ病のしまによる雑記ブログ

『それしかないわけないでしょう』(著:ヨシタケシンスケ)一言感想

こんにちは、本屋店員のしまです。

11月2日にとある本が発売されました。

 

 ヨシタケシンスケさんの『それしかないわけないでしょう』という絵本です。

『みえるとかみえないとか』『りんごかもしれない』といった絵本で可愛らしい絵柄と独特の世界観が話題になりました。うちの店員にも愛読者が多いです。

 

今回そのヨシタケシンスケさんの最新刊『それしかないわけないでしょう』を読んだので、感想をまとめてみました。

 

 

 

 

あらすじ

 

主人公の”妹”は、ある日学校から帰ってきたお兄ちゃんにある話を聞いたことが原因で未来に絶望してしまいます。

いてもたっても居られずおばあちゃんに未来のことを相談すると、おばあちゃんは「決まった未来なんてないんだよ」と妹に語りました。

その話に安心した妹は「決まった未来なんてつまらないじゃない」と色々な未来、可能性について考えだしました……。

 

 

ざっくり感想

 

未来の可能性を狭める大人、広げる子ども

 

おとなはすぐに「みらいはきっとこうなる」とか「だからこうするしかない」とかいうの。でもたいていあたらないのよ。

 

大人になると、どうしても自分で自分の選択肢を狭めていってしまいます。選択肢ひとつひとつには可能性があり、その可能性ひとつひとつに未来があるのに、どうしても一つのことしか見えなくなってしまうんですよね。

でも物事を違う側面から見てみると、必ずしもそうでないということが分かる。分かるんだけど、ついついそのことを私たちは忘れてしまう。そんな忘れてしまっていた可能性を思い出させてくれる言葉です。

 

みらいがたいへんなわけないでしょう!?いろんなみらいがあるでしょう!?

 

「未来が大変なわけない」って、子どもだからこそ言えることですよね。この言葉には心揺さぶられました。

私にも、みんなにもいろんな未来があります。それに改めて気付かされました。未来は私たちの心持ちひとつで変えられるんです。いろんな未来、想像してみませんか。きっとそこにはたくさんの楽しい未来が待っているはず。

 

「すき」でも「きらい」でもない、「すらい」

 

「すきかきらいか」とか、「よいかわるいか」とか、「てきかみかたか」とか、よくきかれたりするけれど、それだってどっちかしかないわけないわよねー。「すき」でも「きらい」でもない、「すらい」とかあってもいいわよねー。

 

個人的にはこの言葉が一番すきです。

私は心を病んで床に臥せった時期がありましたが、その時は思考が「良いか悪いか」「敵か味方か」ということでいっぱいになっていました。

でも、どっちかしかないわけないんですよね。人って時には良い人だったり、悪い人だったりする。それも自分の見方による主観的なものであって、ある人から見たら同じ人、同じ言動でもその良い悪いのさじ加減も全然違う。人ってそんなもんで、その時々によって自分の考え方や見方も違って当然。だから好きでも嫌いでもない人っている。そんな「すらい」な人がいてもいいじゃない。

 

 

こんな人にオススメ

 

小学校低学年以上の子ども

 

この本のテーマは「未来」。

発達心理学に基づくと、「未来」を明確に意識できるようになるのは概ね6歳以上からだと言われています。小学校低学年頃になると、自分本位の意識からの脱皮が始まり、だんだんと周りのことを意識できるようになっていく。その過程の中で、子どもは他人の色んな考えを吸収していきます。そうして、自分の中での価値観を確立していくと言われているのです。

そんな時期の子どもにとって、この本は発展途上の価値観に大きな揺さぶりをかけてくれる本なのではないでしょうか。

こうして書くと随分哲学的な内容の絵本に思えますが、そこは子どもの”妹”が主人公の絵本なので、小さい子どもにもすんなり内容が入ってきます。「毎日ウインナーの未来」とか、嬉しい子どもさんも多いのでは(笑)

 

未来に絶望している、迷っている大人

 

絵本ですが、この本は大人にこそ読んでもらいたい本です。私たちはいつの間にか「これはこうあるべきだ」といった凝り固まった価値観の中で生活しています。

でも、その価値観は本当に絶対なのか?

それをこの本は私たちに問いかけてくれています。限定された価値観の中でもがく私たちに「それしかないわけないじゃない」と、ほんの少しだけですが、背中を押してくれる本です。

 

 

おまけ

 

初版には特典ペーパーが同封されています。

 

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少しはこの本の雰囲気が伝わるでしょうか。

右上の「おもしろアイデア大募集!」といった文字の通り、裏面は自分が考えた「それしかないわけないでしょう」を描けるようになっています。コンテストがあり、オリジナル「それしかないわけないでしょう」を出版社に応募することもできます。

お子さんと一緒に考えて応募するもの楽しいですね。もちろん、「子どもだけが応募するしかないわけないでしょう」?大人の方も是非一度、考えて応募してみてください。

 

 

まとめ

 

未来は一つじゃない、自分でどんな風にも思い描き、書き換えることができる。

子どもにも大人にも、そんな希望を与えてくれる一冊です。

何かに悩んだとき、立ち止まったときにそっと背中を押し、勇気をくれる。

そんな優しい優しい絵本でした。

ぜひ、あなたも自分で狭めてしまった未来、「それしかないわけないでしょう」と可能性を再解放してみてください。